ぼくのスピリチュアル物語 15 「肉体」


静さんは、亡くなられたご主人から霊界通信を受け取るという体験をしたが、彼女自身にはそれを感じ取る能力はなかった。発信者と受信者を繋ぐラジオの受信機のような存在が霊媒のYさんである。ラジオの受信機に徹していたYさんであるが、霊能力があるがゆえの苦しみもあるのだろうか、「もう通信をうけない」と独りの世界に閉じこもるようになったという。

そんなYさんの姿に静さんは「ご苦労をかけて申し訳ありません」と謝ることしかできなかった。
その頃、以下のような通信がきた。

(1985年1月7日の黒住さんからの霊界通信)
《家内があなたに対して、『お世話になります、申し訳ありません』といつもさんざんお詫びを言ってるのだから、いいじゃないですか。あなたとは、過去世で「オレ、貴様」という間柄で、共に修行をして布教活動に歩いた仲だったではないか》

過去世の事実をつきつけられたYさんは、それでふっきれてその後また通信を積極的に受けるようになるのだが、ぼくはYさんに同情を禁じえない。

黒住さんは生前、過去世で深くかかわっていたYさんの存在などちっとも気がつかなかったのである。なのに亡くなって過去世での関係が自分だけわかったからといって、それはないでしょ、と思った。Yさんにしてみれば、過去世の事実を言われても記憶を辿れないわけだし、黒住さんの言動がちょっと「わがまま」に思えた。

ちょっと、霊のくせにそれって「利己的」じゃないか?
過去世とか使命とか、なかなか知り得ないのだから、間引いて考えてよ。
と言いたい。(半分冗談)

だけど、死んでからも性格は変わらないのだなと思った。急に悟るわけでもないし、いまと同じ感覚が死後も続くのである。

(『シルバーバーチの霊訓』より)
「人間は肉体をたずさえた霊であり、私達は肉体を持たない霊です。そこに共通したものがあります。霊というつながりです。あなたがたも今この時点において立派に霊的存在なのです。死んでから霊になるのではありません。もともと霊であるものが地上へ肉体をまとって誕生し、その束の間の生活のためでなく、霊界という本来の住処へ戻ってからの生活のために備えた発達と開発をするのですから、死後も生き続けて当り前なのです。元の原点に帰るということです。」

その肉体は感覚を鈍重にさせる。過去世を忘れ、生まれ変わってきた使命も忘れ、この世の俗欲の誘惑に弱い体質になってしまう。まるでそれは、『巨人の星』の大リーグボール養成ギブスみたいである。(古くてすいませんあせあせ(飛び散る汗)

目的に目隠しをされ、肉体を着た霊、どうやらそれがぼくたち人間の正体らしい。
そんなことを考えながら、ぼくは鏡の中で腹の肉をつまんだ。

(つづく)



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霊的故郷