ぼくのスピリチュアル物語 02 「はじまり」


ぼくのスピリチュアル物語は、20年前の家族旅行から始まる。
いまから20年前の1991年はどんな年だったか、世界的には湾岸戦争、ソ連崩壊などがあり、国内的にはバブルの崩壊が始まったといわれる年である。とはいっても、まだまだバブル景気の影響が色濃く残っていて、一週間ほど休暇をとって家族旅行に出かけられるぐらいだから、その頃のわが家の家計もそれなりに景気が良かったのだろうと思う。

かくして、ぼくたちは名古屋、大阪、広島と親戚知人を訪ねる旅に出かけたのである。
旅の詳細は割愛するとして、語るべきは広島市内に住む友人を訪ねたときのことである。

夫婦でやってる面白いカレー屋さんがあるというので連れて行ってもらった。美味しいというのならわかるが、面白いという意味がわからないまま店に着いた。まず興味を覚えたのは、『百番目のサル』という店の名前だった。

『百番目のサル』は、多くの人が知っている核兵器反対を訴える有名な絵本である。同じ思いがある人数に達したとき、世界中にその思いが、心から心へ伝わっていくという「共時性」を表現した作品だったように記憶している。いずれにしても、その絵本の名前を店名につけるとは、店主はタダ者ではないと思った。そして、店内に入ってさらに驚いた。なぜか店内に、お客様も利用できるという「瞑想室」が設けられていたのである。ぼくは少なからず興味を覚えた。

美味しくカレーを食べ終えて、お約束ごとのように、レジ前で友人と伝票の取り合いをした。結局、友人がご馳走してくれることになったのだが、友人はレジ横に並べてある小冊子を買ってぼくに「これ読んでみて」とプレゼントしてくれたのである。自費出版でつくられた質素な装丁の小冊子は、店主の知り合いで、市内に住む女性によって書かれた本だという。

その冊子には『ある少女への手紙』というタイトルがつけられていた。
そのとき、この小冊子がぼくをスピリチュアルの世界へ誘うことになろうとは思いもしなかった。

(つづく)



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