ぼくのスピリチュアル物語 05 「確信への扉」


黒住静さんとの待ち合わせは、ご自宅近くの喫茶店だった。ぼくたちが到着したとき、すでに静さんは店の前で待っていた。ぼくたちが生後10ヶ月になる長男を連れているのを見て、静さんは挨拶もそこそこに優しく微笑んであやしてくれた。静さんの年齢がちょうどぼくの母親とおなじくらいだったせいもあり、まるで郷里の母親のもとに里帰りしたかのような錯覚を覚えた。

静さんとぼくたちは、旧知の仲のように話し始めた。ぼくがお会いしたとき静さんは、63歳。7年前にご主人を亡くされ、三人の子供はそれぞれ東京や大阪などで独立し、一人暮らしだった。ご主人は広島大学医学部の教授でずっと官舎住まいだったため、亡くなられたことにより官舎を出なければならず、現在のマンションに越してきたということだった。

ひと通り互いの自己紹介めいた話が終わると、ぼくは「ところで」と前置きをして静さんに質問を投げた。
「なにか宗教に関わってらっしゃるんですか?」
いまはどこにも所属してないという答だった。静さんが言うには、これまでかなりの数の宗教書・心霊書を読み、様々な宗教に身を寄せてきたが、どれもハッキリと納得させてくれるものはなかったらしい。

同感だった。ぼくには宗教遍歴はなかったが、その当時、『霊界』『死後』『転生』『前世』『霊能力』などなど、そんなワードがタイトルにつく本を貪るように読んでいた。どれもそれなりに刺激を受けたりして、向こうの世界はこんな風になっているのかなあと思いはするけれど、実感するというところまでには至らなかった。考えても考えてもわからないなら、もう考えることを止めようかとも思ったこともあった。

しかし『ある少女への手紙』の静さんの文章は確信しているように思えてならなかった。どんな本を読んで、どんな体験をして実感したのか、それが知りたかった。

静さんは「こんなことを申し上げて、頭がへんだと思われるかもしれませんが」と、少し戸惑い気味にご自身の体験を話し始めた。

「実は、霊界通信って言うんですか、死んだ主人からたくさんメッセージをもらいましてね」

その現実離れした言葉が母親のような静さんの口から出て来たことに違和感を覚えながらも、ぼくは心のどこかでずっと探し続けていた金脈を掘り当てたようなただならぬ興奮を覚えた。

(つづく)



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